基礎を大切にし深く掘り下げる
どのスポーツ、音楽、仕事。どの分野でも基礎はとても大切です。ではどのくらい大切にしていますか?本当に大切にしていますか?
想定する
サッカーの指導者をしていたときのことです。サッカーの基礎といえばボール扱いです。ボールを蹴る、止めるが基本です。
2対1のパス練習。ともすれば退屈な練習で、惰性でやりがちな練習です。
しかし、やりようによってはとても面白い練習になります。それは想定力です。
パス交換をしているところを観察しているといろいろなことに気が付きます。
ダラダラとやっている組みはただただパスを交換しているだけになってしまいます。そうなる前に私はこう声をかけます。
「もし、パスをする相手の左側から敵が迫ってきていたらどういうパスを出す?」
パスの受け手にも
「もし真後ろに敵にマークがつかれていたらどういう動き出しをしたら前を向ける?」
など試合の様々なシチュエーションを想定してもらいパス交換をしてもらいます。
そうするとパスの出し手と受け手でコミュニケーションがはじまり、レベルの高い練習ができるようになります。その日常の積み重ねが試合につながるのです。
売れない営業から売れる営業になるための基礎練習とは
はじめて営業のチームを任されたとき、サッカーの指導の経験が活きました。
営業の基礎練習とは何だろうかと考えていたとき、ロールプレイングがよい基礎練習になると考えました。当時はインターネットの光回線の販売をしているときでした。
ショッピングモールの一角にテナントを構え、買い物客に声をかけ販売していく仕事でした。
説明をする席に誰も座っていないとチラシを配っても受け取ってもらえませんし、誰も説明を聞いてくれようともしません。飲食店で誰もお客がいないお店は入りにくいのと同じです。
そこで私は会社のユニフォームを脱いで、客になってもらいます。チラシをもらい、説明を聞いてもらいます。そこから着席してもらう必要があるのですが、ここが一つの関門になります。
いかに座っていただけるか。何をどう説明したら座っていただけるのか。
自分が客になって聞いてもらいます。
座らない場合はなぜ座らなかったのか、を相手に伝えるようにお願いしました。またただ客になるのではなく、何かを想定して客になってもらい、何度も何度もロールプレイングを繰り返しました。
メンバーを交代しながらやっていくと様々なことに気が付くようになります。また何度も何度も繰り返すことによってトークにも磨きがかかります。
練習を通してわかってきたことがあります。
それは大切なことは、営業トークが最も大切ではないということです。
お客様が気付いていないこと、また困っていることを引き出し、適切なサービスの話しをすること。そのため、話すことよりも質問と相手の話しを聞くことが大切であり、話している内容から本当は何を求めているのか、というところを想像しながら聞くことが大切だということがチームの中で共有されはじめたのです。
そのような意識でロールプレイングをしているとその雰囲気に釣られてお客様がポップの前で立ち止まるようになったのです。そして立ち止まった方にいきなり商品説明をするのではなく、適切な質問を探求し、話しをしていただくように持っていきます。
そうするとお客様の滞在時間が増え、また一人また一人とポップを見る人が増えてきます。
ポップを見る人が増えてくると不自然にならないようにロールプレイングを中止し、お客様対応をします。
こうすることによって1週間に1回線しか売れなかった人やアルバイトの人でもコンスタントに売れるようになってきたのです。
私もお陰様で70数人いる中で常にトップ10に入ることができました。またチーム員もコンスタントにトップ10入りし、ナンバー1の成績を取るものまで出るようになったのです。
改めて基礎練習の大切さを発見した出来事でした。
チーム作りの基礎とは
それではチーム作りの基礎とは何でしょうか。
基礎と呼ばれるいくつかを紹介します。
1.考え方や姿勢
2.安心する環境づくり
3.目標の共有
4.自己開示
私がこの中でもっとも重要視しているのは1.の考え方や姿勢です。
安心できる環境づくりも目標の共有も自己開示も考え方や姿勢が整っていなければ難しい、というのが経験から感じるところです。
考え方や姿勢を整える第一歩として「ライフポジション」が大切です。
4つのライフポジショ
ライフポジションには4つあります。
1.わたしもOK、あなたもOK
2.わたしはOK、あなたはダメ
3.わたしはダメ、あなたはOK
4.わたしはダメ、あなたもダメ
です。
以下のサイトでテストできるのでやってみてください。
日本心理技術センター
ライフポジション自己診断テスト
もっとも理想的な状態はチーム全員が1.わたしもOK、あなたもOKの状態です。
1.は自分のことも尊重しているし、相手のことも受け入れることができるという考え方や姿勢です。
ワンマンチームに多いのは、リーダーが2.わたしはOK、あなたはダメで部下が3.わたしはダメ、あなたはOKの状態になっています。
ワンマンチームは限界が低い、もしくはリーダーの能力に依存します。部下は他人事で自分の責任で考えることがなく、自主的に行動しなくなります。リーダーの顔色を伺うようになります。
現代はどんどんスピードが上がっています。いちいちリーダの顔色を気にしてやっていたのでは遅れる一方です。
サッカーでも監督やコーチの顔色を気にするチームは限界値がどうしても低くなります。突発的な出来事に対応できなくなり、チームがパニック状態になると手が付けられなくなってしまいます。
現代サッカーも10年前よりもどんどんスピードが上がっています。どんな状況でも選手がピッチで起きている状況を冷静に判断する必要があるのです。
適切なライフポジションで互いに基礎を切磋琢磨できる状況をつくることができれば必ずチーム力は上がります。
チームも仕事も基礎が大切です。そしてその基礎をさまざまなことを想定し、磨き上げることよって今いるメンバーで最強のチームをつくることができるのです。